労働基準監督署と裁判所~恐れることはありません!~
どうも、弁護士の山口真彦です。
本日のテーマは、私の顧問先から質問を受けたので、それに答える形にはなりますが、「労働基準監督署と裁判所」の違いです。
経営者であれば、この2つの機関はあまり耳にしたくないものだろうなと思います。
だからこそ、この2つの機関がどういう機関なのかをしっかり理解していれば、従業員から「労基署に相談するぞ!」と脅しのようなことを言われても冷静に対応できますので、しっかり理解しておきましょう。
早速ですが、問題です!
ある従業員を解雇しました。
すると、その従業員が「この解雇は不当解雇です。すぐに労基署に申告します。」と言われました。
さて、この従業員の対応は正しいでしょうか?
いかがでしょう?
実際、経営者の方はこのようなことを従業員に言われた経験がある方もいらっしゃると思います。
実際、私のもとにも従業員から労基署に申告すると言われたけどどうしたらいいのか?という相談が来ることもあります。
実は、この従業員の対応は、間違っています。
仮に、不当解雇を訴えて従業員が労基署に駆け込んでも、労基署は何もすることはできません。
労基署
そもそも、労基署とは何をする機関かというと、「労働基準法」を守らない使用者を指導監督する機関です。
あくまで、「労働基準法」に違反しているか否かの判断しかできないのが、労基署です。
しかし、解雇が無効か否かについては、「労働契約法」の範囲になります。
ですから、労基署は解雇が無効か否かの判断はできません。
このような紛争については、裁判所が取り扱うことになります。
ですから、この従業員は、労基署ではなく、まずは弁護士のところに相談に行くが正しいことになります。
もちろん、解雇予告手当が支払われていないなど労働基準法の話になれば、労基署が使用者に対して、予告手当を払いなさいと指導する場合はあります。
では、労基署が扱う「労働基準法」とはどんな法律なのかを理解しておけばいいですよね。
そこで、労働基準法を簡単に解説します。
労働基準法とは
労働基準法のご先祖様は、工場法という明治時代にできた法律です。
当時は、労働に関する規制が全くなく、使用者がその経済力にものを言わせて多くの人々を過酷な環境で働かせました。
それはさすがにまずいとなって、労働者を保護するために、使用者に対して最低限これだけは守りなさいという基準を定めました。
それが、改正を経て、今の「労働基準法」になったわけです。
つまり、「労働基準法」は、労働者が働く条件について最低限の基準を定めたものになります。
たとえば、賃金は最低賃金以上は払いなさいとか、労働時間は1日8時間までよなどです。
つまり、労基署は、この最低限の基準を守っていない場合に限り、会社に指導等を行うに過ぎないのです。
会社は、労働基準法の最低限の基準を守っていれば、堂々としていればいいのです。
裁判所
では、裁判所ですが、裁判所は、個別の労働契約に関するトラブルを広く扱う機関です。
まさに先ほどの事例のように解雇が無効か否かや未払いの残業代の問題などです。
裁判所で裁判等になった場合は、解決までにかなり時間を要します。
そのため、個別の労働トラブルについては、裁判になる前に解決することが賢明です。
意地を張って、紛争が泥沼化し、裁判になってしまい、裁判前であれば給料3か月分で解決できたものが、裁判で1年分以上払えということにもなりかねないからです。
正直、労基署よりも裁判所の方がやっかいだと思ってください。
労基署からの連絡はある意味早期解決のチャンス!
最近は、様々な情報がネットから得られますので、従業員側もとりあえず労基署に相談してみようと思って相談するケースが多くあります。
その際、労基署から連絡があったとしても、それは、裁判前に解決ができるかもしれないというある意味チャンスです。
全く恐れることはありません。
冷静に対処し、まずは顧問弁護士などに相談をして、裁判前に解決できるように行動することをオススメいたします。
それでは本日は以上です。
ありがとうございました。