ハラスメント対策その①〜結局何すりゃいいの?〜

ハラスメント対策その①〜結局何すりゃいいの?〜
stand.fm「ウィンベルリスクマネジメントチャンネル」書き起こし
【2024年11月11日放送 労働法#15 ハラスメント対策その①〜結局何すりゃいいの?〜】

はじめに

本日も経営者のための労働法講座を始めていきたいと思います。

本題に入る前に少しお知らせをさせてください。

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たくさんあるハラスメント・・どれを対策すればいい?

それでは、本題に行きたいと思います。

本日から数回に分けて「ハラスメント対策」についてお話ししていきたいと思います。

近年、ハラスメントの前に色々な言葉がついた「○○ハラスメント」といった言葉が出てきています。

これに対し、当然会社も対応しなければいけませんが、結局何をすればよいのかという部分が重要になります

この点について、数回に分けて具体的なハラスメント対策を見ていきたいと思います。

初回である今回は、ハラスメント全体のお話をさせていただきます。

企業が対策すべき4つのハラスメント

ハラスメントという言葉について、色々な種類が増えているとご紹介しました。

会社として、しっかりと対応しなければならないハラスメントというのは、現時点では大まかに分けて4つあります。

この4つのハラスメントについて、今回は全体像をお話しして、次回以降に具体的に会社としてどのような対策をする必要があるのかお話しさせていただければと思います。

企業が対策するべき4つのハラスメントというのが、

  • セクシャルハラスメント
  • パワーハラスメント
  • マタニティハラスメント

そして、最近出てきた、

  • カスタマーハラスメント

この4つになります。

カスタマーハラスメントについて

注意点としては、カスタマーハラスメントのみ、若干性質が異なるという点です。

基本的に他のハラスメントは、原則的に社内の人間が社内の人間に対して行うハラスメントというのが一般的かと思います。

もちろん、外部の取引先の方がセクハラしました。ということもありますが、一般的には社内で起こっている出来事という形になります。

しかし、カスタマーハラスメント(カスハラ)については、社外の人間(顧客)から社内の従業員に対して行われるハラスメントになります。

では、社外の人間が行う行為に対し、なぜ会社は対策しないといけないのでしょうか。

例えば、カスタマーハラスメントが発生した場合の対策等を事前にしておらず、モンスターカスタマーのようなお客さんが現場(店舗等)にやってきたとします。

モンスターカスタマーが現場の従業員に対して不当な要求をして来た場合のマニュアルを会社が作っておらず、現場に対応を丸投げすると、従業員は辛いですよね?

辛い思いを抱えて精神的に負担がかかってしまうと、その従業員が精神疾患になってしまう可能性もあります。

その結果、精神疾患になった従業員から、例えば、労災申請されましたとか、安全配慮義務違反ですと言われて損害賠償請求を受けたりとか、こういう形でカスタマーハラスメントを放置すると労務問題にもなってしまいます

そのため、会社としても従業員を守るために、カスタマーハラスメントに対してしっかり対応をしておく必要があります

ハラスメントはその定義が非常に重要

各ハラスメントですが、定義が非常に大事になってきます。

パワハラやセクハラといった言葉が先行しているので、定義自体を正確に理解していない方が多くいらっしゃいます。

その結果、何でもかんでもパワハラ、セクハラ、マタハラだ。という状況になり得る可能性が何が生じます。

当然ですが、何でもかんでもパワハラになるわけではありません

そのため、それぞれのハラスメントの定義はしっかりと抑えておく必要があります。

少し長くなりますが、今回は先ほど申し上げた4つのハラスメントの定義について、まずはお伝えしたいと思います。

セクハラ(セクシャルハラスメント)の定義

セクハラとは職場における性的な言動に対する他の従業員の対応等により、当該従業員の労働条件に関して不利益を与えること、または性的な言動により他の従業員の就業環境を害することです。

マタハラ(マタニティハラスメント)の定義

マタハラとは、職場において行われる妊娠出産したことや育児休業等の利用に関する上司や同僚からの言動により、女性労働者や育児休業等を申出取得した男女労働者等の就業環境が害されることです。

マタハラについては少し注意点があり、男性従業員もその被害者になり得るということはしっかり頭にいれておいてください。

育児休業等は男性も取れるようになっておりますが、育児休業を取った際に「男がそんなものを取ってどうするんだ。」と言われた場合にマタハラになり得るという点に注意が必要です。

カスハラ(カスタマーハラスメント)の定義

カスハラについては、法律上明確な定義というのは正直ありません。

まだ実際に法整備がなされているわけではなく、現時点において東京都の方で条例ができるというところまでは決まっていますが、まだ法律上の具体的な定義までは至っていません。

現状、厚生労働省等が発表している「対策マニュアル」というものの中に記載されているカスハラの定義は次のとおりです。

顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段対応が社会通年上不相当なものであって、当該手段対応により労働者の就業環境が害されるもの

こういったものをカスハラと言います。

ハラスメント対策について

これらのハラスメントに対して、まず企業が講ずべき対策は何なのか、抽象化してお伝えすると、概ねどのハラスメントについても同じ内容になります

そのため、今回は大まかな対策の全体像について理解していただければなと思います。

私の整理では、大まかな対策の内容としては大きく分けて6つになるかと思います。

企業としてハラスメントに対する姿勢や方針について明確化しましょう

ハラスメントに対して、会社としては厳しく接していきますよ等、姿勢方針を明確にした上で、それを従業員等に周知・啓発していくのがハラスメント対策の一歩目になります。

ハラスメントに対して従業員が相談等ができる環境を整える

ハラスメントを受けた従業員からの相談等に応じ、それに対応するための必要な体制整備をしていきましょう。

よくあるのが相談窓口です。

「ハラスメントは一人で悩まず、ここの番号に連絡していただければ相談できますよ」という形で相談窓口を設けておくといったものが二つ目の対策になっていきます。

ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な措置をとる

これはハラスメントが起こった後の話です。

もちろん起こらないのが一番いいのですが、万が一起こった時に放置してしまうというのが一番まずいので、その時の対策としてハラスメントへの事後の迅速かつ適切な措置をとるということです。

例えば、相談窓口にハラスメントの被害申告があった場合、迅速かつ適切に対応できるようにマニュアルを作っておく、そういった部署を作る等が必要になってきますよというお話です。

ハラスメントが起こらない環境にする

これも事後的なものですが、なぜハラスメントが起こったのか、そしてそれが起こるような環境を解消してほしいという点です。

これは当然ですよね。

ハラスメント再発防止策への取り組み

万が一ハラスメントが起こってしまったとします。

起こってしまったことは正直仕方ないのですが、同じことを繰り返してはいけません

では、そのための再発防止策としてどのようなことをしないといけないのか。

こういったところをきちんと考えていくのがハラスメント対策の五つ目です。

従業員等を安心させるための対応

再発防止策を考えても、それで終わりでよいのか?違いますよね。

実際に被害者が出ているわけです。

  • 従業員を安心させるために会社としては、こういう取り組みをしました。
  • 今後の再発防止策として、こういう取り組みをを行っていきます。安心して働いてください。

こういったものを会社が従業員に対して打ち出していくことも、ハラスメント対策としては必要になります。

おわりに

ここまでは抽象的に6つハラスメント対策の内容をお伝えしました。

セクハラの場合はこれが必要、パワハラの場合はこういったことを注意してください。といった具体的な内容は次回以降のご紹介していきたいと思います。

今回は、会社が対策を講じなければならない4つのハラスメントに対する全体像と定義のお話、対策についてをざっくり把握してもらえたら十分かと思います。

本日は以上です。ありがとうございました。

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弁護士山口真彦
山口真彦
弁護士

ウィンベル法律事務所/ウィンベル合同会社代表。

大学卒業後、中小企業で営業マンとして勤務したのち弁護士へ。

弁護士登録後は、自身が中小企業で勤務していた経験をもとに、企業に関わるすべての人を幸せにするために弁護士にできることをテーマに日々活動している。

交渉学に基づいた交渉術を駆使し、早期円満解決がモットー。

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