定年後再雇用〜「再雇用は最高よ!」のために〜 その③
はじめに
弁護士の山口真彦です。
本日は定年後の再雇用に関するトラブルについてお話しします。特に、65歳定年後の再雇用に関する問題について焦点を当てます。
前回は60歳で定年を迎えた従業員の再雇用について、原則として希望者全員を再雇用する義務があるというお話をしました。
今回は、65歳で定年を迎えた方をさらに再雇用する場合についてお話しします。
企業は再雇用の条件を設定することができる
65歳定年後の再雇用において、実は企業側は再雇用の対象者に対して条件を設定することが可能です。
よく見られる具体的な条件としては、以下のようなものがあります。
- 過去3年間の出勤率が80%以上であること
- 過去3年間の人事考課の成績がB以上であること
上記以外に、「会社が特に必要と認めるもの」という少し曖昧な条件を設定することは可能なのか?という質問をよくいただくのですが、回答としては、「可能な場合もあるし、そうでない場合もある」となります。
再雇用の条件は「具体的か客観的」に
再雇用の条件を設ける場合、その条件が「具体的かつ客観的」である必要があります。
先ほどの例でいうと
- 過去3年間の出勤率が80%以上であること
- 過去3年間の人事考課の成績がB以上であること
出勤率はタイムカードなどで確認できますし、人事考課も過去の成績が記録として残るため、これらの条件は「具体的」かつ「客観的」ですので、問題にはなりません。
一方で、「会社が特に必要と認める者」という条件だけでは、主観的であり曖昧で、企業の恣意的な判断を許す余地もあるため、客観性がないと判断される可能性があります。
しかし、「出勤率80%以上の者、または会社が特に必要と認める者」などと、他の条件に加える形で設定することで規定をすれば問題になりません。
ポイントは「または」を使う
ここでのポイントは、「かつ」ではなく「または」を使うことです。
例えば、「出勤率80%以上の者、または会社が特に必要と認める者」という条件であれば、80%以上を満たさない場合でも、会社がその従業員を特に必要と認めれば再雇用することができます。
一方、「かつ」を使った条件設定は範囲を狭め、会社の恣意的な判断が入る余地があるため、客観性がないと判断されてしまう可能性があります。
設定した条件は平等・厳格に運用をする
しかし、このように問題のない条件を設定しても、その運用が平等でなければトラブルに発展する可能性があります。
過去の事例で、バス会社が「過去に事故や規律違反があり、指導をしても改善しなかった者は再雇用しない」という条件を設定していたものの、再雇用を拒否された従業員から「自分と同じように過去に違反行為や事故、服務規程に違反するような行為があった従業員が再雇用されてなぜ自分は再雇用されないのか」と反論されたというものがあります。
このように、再雇用の条件を満たさないものの「今回だけは特別だ」と甘い対応をしたり、就業規則に退職金規定がないのにも関わらずある従業員には退職金を支払う、ある従業員には支払わないという運用をしてしまうと、裁判所からその例外をルールと判断されてしまいう可能性があることをしっかり押さえていてください。
おわりに
65歳以上の再雇用の条件は具体的かつ客観的であることが重要です。
また、設定した条件を平等に厳格に運用することが求められます。これらのポイントをしっかりと押さえ、トラブルを未然に防ぎましょう。