定年後再雇用〜「再雇用は最高よ!」のために〜

定年後再雇用〜再雇用は最高よ!のために〜
stand.fm「ウィンベルリスクマネジメントチャンネル」書き起こし
【2024年6月12日放送 労働法#7 定年後再雇用〜「再雇用は最高よ!」のために〜】

弁護士の山口真彦です。

これから数回に分けて定年後再雇用の問題について扱いたいと思います。

今回は、

  • そもそも定年後再雇用とは何か
  • 定年後再雇用におけるよくあるトラブル

この点についてお話ししたいと思います

高齢者雇用安定法

日本には高齢者雇用安定法という法律があります。

この法律によると、会社は定年を60歳以上に設定する必要があり、さらに定年後も65歳までは高齢者の雇用の確保をしなければならないと企業に義務づけられています。

さらに、現在ではこの高齢者雇用安定法が改正され、70歳までの高齢者の就業機会の確保が努力義務になるなど、企業の対応はどんどん大変になっています。

現在は、企業は次のいずれかの対策を講じなければなりません。

  1. 65歳までの定年の引上げ
  2. 65歳までの継続雇用制度を設けること
  3. 定年制の廃止

定年制の廃止および定年を65歳に引き上げることは、コストをはじめ様々なリスクが伴いますので、2番目の65歳までの継続雇用制度というのを多くの企業では採用しています。

再雇用トラブルの具体例

継続雇用制度を採用していると様々なトラブルが発生します。

よくあるトラブルとして、以下の5つをご紹介します。

  1. 60歳定年時に再雇用しない場合
  2. 65歳以上で再雇用しない場合
  3. 再雇用する際の条件面に折り合いがつかない
  4. 同一労働同一賃金との関係
  5. 雇い止め

1.60歳定年時に再雇用しない場合

定年後に再雇用する場合、企業は原則として希望者全員を再雇用しなければなりません。

例外的に、再雇用を拒否できる場合というのは2つ認められています。

  • 病気など、心身の故障のために業務に耐えられない場合
  • 勤務状況が著しく不良で、解雇う退職事由がある場合

これらに該当する場合は、企業は再雇用を拒否できるとされています。

しかし、会社が「あなたには解雇事由があるので再雇用はしません」と従業員に伝えると、「自分に解雇事由があるわけがない」と反論されてトラブルになる場合があります。

2.65歳以上で再雇用しなかった場合

60歳の場合は原則希望者全員を再雇用しなければならなかったのに対し、65歳の場合は再雇用する対象者について企業側が条件をつけることができます(例:勤務成績がこういう場合は再雇用しますよ等)。

しかし、企業が「条件を満たしてないからあなたは65歳以上は再雇用しません」と拒否した場合、拒否された従業員は「私は条件を満たしてる!」「私は再雇用される人材なんだ!」と争ってくる場合があります。

3.再雇用時の条件面に折り合いがつかない

一般的に、再雇用時は労働条件が下げられるため、それに伴い給料や勤務日数が減るという形になります。

その提示された労働条件に従業員側が不満を持つことでトラブルになる場合があります。

4.同一労働同一賃金との関係

再雇用前と仕事内容が変わらないにも関わらず、賃金だけ下げた場合にトラブルになります。

5.雇い止め

一般的に、定年後再雇用の場合は基本的に1年間の有期雇用という形をとります。

つまり、1年ごとに更新をしていくことになりますので、更新の際に会社側が「あなたとの契約は更新しません」と雇い止めを行うことができます。

そうすると、従業員が雇い止めに不服があると争ってくる場合があります。

おわりに

このように、定年後の再雇用には様々なトラブル・リスクがあります。

次回以降、前述した再雇用の際に起こりうる5つトラブルについて、一つずつ詳しく解説し、トラブル発生時に会社としてどういう対策を取っておけばいいのかという点について説明したいと思います。

弁護士山口真彦
山口真彦
弁護士

ウィンベル法律事務所/ウィンベル合同会社代表。

大学卒業後、中小企業で営業マンとして勤務したのち弁護士へ。

弁護士登録後は、自身が中小企業で勤務していた経験をもとに、企業に関わるすべての人を幸せにするために弁護士にできることをテーマに日々活動している。

交渉学に基づいた交渉術を駆使し、早期円満解決がモットー。

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