最強の交渉ツール『BATNA』-その2-

前回の「最強の交渉ツール『BATNA』-その①-」の続きです。
前回の事例をもう一度紹介しますね。
事例
皆さんはプロ野球選手だと思って球団と年俸交渉をすると想定してみましょう。
- 事例
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今シーズンの年俸は、昨シーズンの大活躍により大幅アップし、3億円で契約しました。
しかし、今シーズンは、ケガの影響により出場試合数は、前年の半分にも満たず、規定打席にも到達しませんでした。
レギュラーは若手選手に奪われてしまいました。
球団から「来週、球団事務所に来てくれ。」と連絡があり、年俸交渉が行われることになりました。
大幅な年俸減が見込まれるこの状況で、あなたが選手の立場の場合、どのような準備をして球団との年俸交渉に臨むでしょうか?
この年俸交渉を選手の立場でうまく進めるためには、事前にどのような準備が必要でしょうか?というお話でした。
これを前回紹介した「BATNA(今の交渉が決裂した場合の最善の代替案)」を考えると一見、圧倒的不利な立場に見えるこの交渉もうまく進めることができます。
BATNAは、今の交渉が決裂した場合に考えられる代替案の中で、最も自分にとっていいものです。
ここで、注意したいのが、原則③の「選択肢(=Option)」との違いです。
Optionは、あくまでも今、交渉している相手方と優れた合意のために考えられる選択肢のことです。
つまり、Optionは「我々には何ができるだろうか?」を考えること、BATNAは「合意できなくても、この手がある!」を考えることです。
これを踏まえて、事例を考えてみましょう。
皆さんが選手の立場だったら、どうしますか?
おそらく、多くの方は、どのぐらい減額の提示を受けるかな?とか、とか、Optionに目が向いていたと思います。
ここで、BATNAに目を向けてみましょう。
交渉が決裂しても他球団が興味を持ってくれるかも知れない(事前に水面下で交渉を始めておく。)し、もう少し視野を広げれば海外の球団が興味を示してくれるかも知れません。
つまり、交渉の前に有力なBATNAを作っておくと、実際の交渉では冷静に交渉ができ、また判断が容易になります。
というのも、交渉の多くは、このOptionとBATNAの比較だからです。
- Option≧BATNA→Optionを選択する。
- Option<BATNA→BATNAを選択する。
このような簡単な構図になるのです。
BATNAの有無、BATNAの強さによって、交渉の良し悪しに大きな影響を与えることがご理解いただけると思います。
ぜひ、皆さんも交渉に際しては、Optionも大切ですが、それに加えて、BATNAに目を向けてみてください。
一気に交渉がしやすくなりますよ。
※実際のプロ野球の交渉では、球団が保留権を有する選手に対して、水面下で他球団が交渉を行うことは禁じられています。上記事例はあくまでもBATNAを理解していただくための架空の事例とご理解ください。
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