交渉の4つの原則とは その4「基準」
前回は前回のコラムでは「原則立脚型交渉」の4つの原則のうち、3つ目の「選択肢」について解説しました。
本日は、原則立脚型交渉が立脚する最後の原則である「基準」についてお話します。
納得できるのはどっち?
早速ですが、次の2つの事例でどちらが納得して合意できるでしょうか?
経営者と従業員(労働組合)とのベースアップの交渉です。
事例1
来年からベースアップ10%をお願いします!
10%なんて到底無理だ。せいぜい3%が限界だ!
3%なんてあり得ないです。もう交渉になりませんね。
じゃあ、もう間をとって6%アップでどうだ?もうこれで決めてくれ。
事例2
来年からベースアップ10%をお願いします!
10%なんて到底無理だ。せいぜい3%が限界だ!
今のインフレ率が3%なので、3%のベースアップだと実質的なベースアップになってないんです。
確かにそうだな。ただ、近年の平均賃金上昇率はインフレ率を除いて2%だから、インフレ率を考慮して5%アップでどうだろうか?
いかがでしょうか?
皆さんが従業員側の場合、事例1と事例2で「納得して」合意できるのはどちらでしょうか?
単純にベースアップの割合だけを比較すると、6%と5%なので、事例1の方がいいと思われるかも知れませんが、今回は、そのような比較ではなく、それぞれの当事者になったときに、どちらが納得できるかという視点で考えてみてください。
そうすると、どうでしょうか?事例2の方が納得感がありませんか?
その理由は何でしょうか?
事例1は最終的な合意内容である6%の根拠が、「間をとって」という非常に曖昧なものです。
一方で、事例2は、その数字の根拠は、「インフレ率」「平均賃金上昇率」といった客観的な統計資料に基づくものであり、経営者側、労働者側双方の言い分に説得力があります。
つまり、最終的な合意の際、当事者全員の納得を得るために、客観的基準に基づく解決を強調すべきであるということです。
では、ここでいう「客観的」とはどのようなものでしょうか?
一言でいうと、当事者の意志や感情に左右されないファクトやエビデンスに基づく基準ということです。
たとえば・・・
- 統計
- 相場
- 先例
- 科学的・専門的見地
- 慣行
- 平等性
- 道徳的基準
などです。
「基準」という原則において重要なのは、この基準も複数あり得るということです。
基準が1つしかないと思い込むと、「選択肢」でもお伝えしたように、優れた合意に導くことができない可能性もあります。
具体的に客観的な基準を見つけ出すためには、これからお伝えする3つのポイントをお伝えします。
それが・・・
- 正当性=当事者全員が納得できること
- 実用性=誰でも実行可能なこと
- 相互性=当事者全員にとって公平であること
です。
たとえば、私は極力裁判をせずに紛争を解決することをモットーにしていますが、裁判をする場合もあります。
それは、交渉の相手との関係において裁判という方法が上記3つのポイントを押さえているのであれば、裁判をすることがあります。
裁判所という「正当な第三者に判断を任せる」という客観的な基準に基づいて、紛争の解決を図るということです。
おわりに
以上のように、客観的基準に基づいて合意をすることで、当事者全員が納得できる解決をすることができます。
そのためにも、基準を探るということも交渉では重要になります。
本日は以上です。次回をお楽しみに。