交渉の4つの原則とは その2 「利益」

交渉の4つの原則とは その2 「利益」

前回のコラムでは「原則立脚型交渉」の4つの原則のうち、1つ目の「人」について解説しました。

本日は、原則立脚型交渉が立脚する4つの原則のうち、2つ目の「利益」についてお話したいと思います。

早速ですが、次の事例を考えてみてください。姉妹の話です。

事例で考えてみましょう

1個のオレンジを目の前にして…

1個のオレンジを巡るこの姉妹の争いを円満に解決してください。

ただし、オレンジは目の前のこの1個しかありません(もう1個買ってくることはできません。)。

また、円満な解決とは、優れた合意=Win-Winな合意、つまり、姉妹両方とも一切不満がない解決のことを言います。

どう解決しますか?

いかがでしょうか?皆さんならどう解決しますか?

そんな解決方法なんかあるのか?と思うかも知れませんが、今回お伝えする「利益」という原則に立ち返ると、あっという間に解決できるんです

では、考えていきましょう。皆さん、この事例を見た時、

  • 母親の言うとおり、半分にすればいい。
  • 今回は、姉が我慢して、妹にオレンジを譲るべきだ。
  • どちらにもオレンジはあげず、2人とも我慢させる。

などの解決方法を考えませんでしたか?しかし、いずれの方法も一方、もしくは両者に不満が残る結果になりますよね?

これは、皆さんが姉妹の立場や解決の条件などに囚われてしまっているからです。

ここで着目すべきは、「利益」なんです

「利益」に着目して考えてみましょう

そもそも、交渉の目的は何でしょうか?立場を守ったり、条件面を調整したりすることではないですよね?

あくまでも、両者の利益を満足させることが交渉の本来の目的です。

つまり、交渉を行う場合は、常に自分と相手が満足させたい「利益」に注目しなければならないのです

では、今回の事例で姉妹それぞれの「利益」は何でしょうか?つまり、なぜ姉妹は1個分のオレンジを手に入れたいと言っているのでしょうか?

もう少し、姉妹の話を聞いてみる必要がありそうですね。

ちょっと聞いてみましょう。

オレンジをどう分けるかという条件面ではなく、「なぜオレンジが必要なのか」というオレンジから得たい利益に目を向けると、この姉妹の争いごとを一瞬で解決することができるのです。

姉はオレンジの実を必要としており、妹はオレンジの皮を必要としていたんですね。

そうすれば、両者の利益を満足させる優れた合意が形成できますよね。

おわりに

今回の事例は、教科書事例的なものでしたが、実際の交渉の場面でも、立場や条件に固執してしまっていませんか?

交渉においては、まずは、「利益」に着目して、そもそも今回の交渉で満たしたい利益はなんだろうと根本的なところに戻って考えることが非常に重要になります

「利益」に着目することで、スムーズに両者が満足する合意に至ることができるようになります。

ぜひこれから交渉をする時は、まずは自分と相手の「利益」に着目してみてください。

今回は以上です。

次回は3つ目の原則である「選択肢」についてお伝えしたいと思います。

弁護士山口真彦
山口真彦
弁護士

ウィンベル法律事務所/ウィンベル合同会社代表。

大学卒業後、中小企業で営業マンとして勤務したのち弁護士へ。

弁護士登録後は、自身が中小企業で勤務していた経験をもとに、企業に関わるすべての人を幸せにするために弁護士にできることをテーマに日々活動している。

交渉学に基づいた交渉術を駆使し、早期円満解決がモットー。

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