いい交渉とは?
はじめに
前回のコラム「 この世は交渉の結果で成り立っている!」では交渉学を学ぶメリットをお伝えしましたが、そもそも、 学ぶべき交渉とはどんな交渉なのかについて今回はお話したいと思います。
そもそも、 いい交渉とはなんでしょうか?
交渉学では、明確にいい交渉の評価基準を設けています。それは以下の3つです。
- 合意が可能な場合にそれが優れた合意になるか
- プロセスが効率的であるか
- 交渉後に関係が改善しているか(あるいは少なくとも損なわれていないか)
この3つの基準で交渉の良し悪しを判断します。
合意が可能な場合にそれが優れた合意になるか
1つ目の基準は、 交渉の結果、合意した内容が当事者の利益をできるだけ満たしたお互い納得できる合意であるかどうかです。
たとえば、交渉学でよく出てくる事例ですが、図書館で勉強していた2名の学生のうち、一方の学生が、 空気の入れ替えをしたいと思い、窓を開けようとしました。それに対し、もう一方の学生は、 窓を開けて風が吹くと資料が飛ばされるので開けないで欲しいと言いました。
この窓を開けるか否かの問題を交渉で解決するとどのような解決策があるでしょうか?
窓を開けて欲しくない学生は図書館から出て行ってもらう?そんな結論になると、出て行かされる学生は納得しないですよね。
窓を開けたい学生に開けて欲しくない学生が勉強を終え、図書館から出て行くのを待ってもらう?この結論も今、窓を開けて気分転換をしたい学生は納得しないでしょう。
では、どうするのか?学生2人の利益を満たした解決策はないのか?
結論を言うと、この場面では、 隣の部屋(空気の入れ替えはできるけど、風の影響は少ない場所)の窓を開けるという方法で解決することができます。
あくまで、架空の事例ではありますが、皆さんに知っていただきたいのは、 交渉の末、到達する合意は、当事者の利益を満たした合意(優れた合意)であれば、その交渉は評価できるということです。
プロセスが効率的であるか
2つ目の基準は、たとえば、世間一般で行われている駆け引き型交渉をイメージしてください。お互いに極端な条件を提示し、じわりじわりと譲歩をして合意に近づくような交渉です。
このような交渉を行う場合、最初に極端な条件を提示することにより、その条件に固執してしまったり、あまりにも極端な条件を言ってしまったがために譲歩がしづらかったり(譲歩の幅が狭くなったり)と仮に合意ができるとしてもその合意に達するまでの時間や労力が多くかかってしまいます。
また、最初に極端な条件を提示した後に譲歩をすると、「最初は100万円って言ってたのに、結局30万円でいいのか、最初の100万円は何だったんだ・・・何か裏があるのか」と相手を疑心暗鬼にさせてしまい、合意が遠のくもしくは合意できないという状況を作りだしてしまいます。
このような非効率的な交渉は評価できないということです。
交渉においては、 合意という結論だけでなく、その結論に至るプロセスもその良し悪しを判断する1つの基準になるのです。
交渉後に関係が改善しているか(あるいは少なくとも損なわれていないか)
最後の3つ目の基準は、いい交渉はお互い納得し、かつ効率的に合意に達するので、当事者間の関係性が崩れることはありません。むしろ、 関係性が改善されることすらあります。
たとえば、ビジネス上の交渉で、交渉が非常にスムーズでかつ納得行く合意ができれば、その相手をまた取引したいと思いますよね。
このように 将来に繋がるような交渉は良い交渉と評価できます。
おわりに
以上のように、いい交渉とは、この3つの基準を満たした、 「優れた合意を効果的かつ友好裏にもたらす交渉」のことをいいます。
このような交渉のことを、 「原則立脚型交渉」と呼びます。
これから皆さんにお伝えする交渉は、この原則立脚型交渉です。優れた合意(結果)を効果的かつ友好裏にもたらすことを目的とした交渉をぜひ学んでください。
ちなみに、この「原則立脚型交渉」は上記の目的を達成するために立脚しなければならない原則が4つあります。
その原則が・・・
- 人
- 利益
- 選択肢
- 基準
です。次回以降、この4つの原則について解説していきます。
ここまで、抽象的な話が中心でしたが、次回以降、実際の事例も紹介しながら解説していきたいと思います。